星になったあなたへ 拝啓きみへ、今日も星は燃えています パイロットスーツの上からロープを腰に巻いて、プトレマイオスの上部にすとんと腰を下ろす。 なんとなく、宇宙に出たくなって、スメラギに許可をもらった。 特に危険区域でもないから簡単に許可は得たが、やっぱり不思議そうな顔をしていた。 「彼」に触れたい、と思ってしまった。 そんな風に思ったのは、きっと先日「彼」の弟が馬鹿みたいな冗談を言ったからだろう。 「彼」が散ったのは、どの辺だろうか。 ぼんやりと、そんなことを思った。 音がない宇宙は、やっぱり静かだった。 遠くの方で、小天体が衝突し合って壊れたのが見えた。 『なぁ刹那、知ってるか?』 彼が教えてくれたことを、ふいに思い出した。 『流れ星ってさ、元はただの岩なんだ。地球の周りを回ってる、小さな天体。 それが地球の大気圏に入ると、燃えて、地上から見ると綺麗に光るんだ。 地球から見たらあれだけ綺麗なもんが、宇宙に出たらただ岩が燃えてるだけなんだ』 不思議だよな、とそう言って、彼は笑った。 だから何だ、という顔をしてやったけれど、それでも彼は笑っていた。 『人は死んだら星になるとかたまに言うけどさ、もしその星が流れ星になって燃えたら、今度はどうなるんだろうな』 そう言って、遠い遠い彼方を見て、彼は言った。 彼も星になったんだろうか。 それとも彼は彼のまま、まだこの宇宙を彷徨っているのだろうか。 何かを発信したら、それは彼に届くのだろうか。 ふと、フェルトが彼に書いた手紙を思い出した。 あれは、彼に届いたのだろうか。 自分は彼に書いたりなんかしなかった。 あの時は書こうと思っても、一体何を書いたらいいかわからなかったから。 ロックオン。 お前の弟が、お前にとって俺は「特別」だったなんて、そんな馬鹿げたことを言っていた。 信じてなんかいない。 ただの、戯れ言だと思っている。 けれどもしも。 もしも、それが本当なら、俺は、まだもう少しだけ、お前を想っててもいいんだろうか。 ほんの少しだけ、自惚れてもいいんだろうか。 熱を求め合ったのは、ただお互いがそこにいたからじゃなくて、お互いを必要とし合ってたのだと、思っていいのだろうか。 …きっと、失うことを怖がってたのはお前だけじゃなかったんだ。 ロックオン。 今日も世界は歪んでいて、どこかで争いが起きている。 その度に、この宇宙の星は増えているんだろうか。 お前はそれを、すぐ側で見ているんだろうか。 遠くの方で、また小天体がぶつかり合って壊れていた。 地球では、今日も空で星が燃えているんだろう。 それは人に喜びを与える光になる。 でもどうか。 どうか、きみだけはあのそらにもえませんように。 09.05.08 日記掲載 title by=テオ ――――――― 兄さんに手紙を出すせっちゃん、というのを書いてみたかった。 でも別に続きじゃなくても書けたような気がしてきた。(… |