宇宙の片隅で、ひっそりと大事件 内緒のかくれんぼ 「ロックオン」 女性にしては低い、けれど耳に心地よく響く声に呼ばれ、振り向く。 宇宙空間の無重力によって揺れ動く黒い癖毛に真っ直ぐな赤褐色の瞳が目に入れば、無意識に口元が緩んだ。 バーに掴まって無重力を移動して来た刹那を、腕を伸ばして受け止める。 「どうした?」 「いや、知らねぇな。てっきりお前さんと一緒だと思ったよ」 普段一人の時は近付かないようにと言っていたから探す先としては除外していたのだが、ハロもいないと なれば話は別だ。 ライルに頼んでついこの間ロールアウトしたばかりのケルディムのハッチを開けてもらえば、コックピットの中で、 規則正しく寝息を立てる小さな子どもと、そして、今は弟の相棒となったA.Iがそこにいた。 「シリル」 刹那が真っ先にコックピット内に入り、シリルを抱き上げた。 背中をこちらに向けていたから表情は見えない。 けれど、心底安心した、込み上げる何かに耐えているであろうことは予想出来た。 「なるほど、ハロと一緒ならこの中も入れるわな」 ライルが納得したようにそう言う。 ハロにはデュナメスの時と同じように、ケルディムの認証システムが組み込まれている。 コックピットのロックを解除することなど、わけないのだ。 『シリルネテル、ネテル』 人の苦労も知らずに、単調な声でハロがそう言う。 どういうつもりでここにシリルを連れて来たのかは知らないが、しばらくシリルと一緒に行動させないようにしようと心に誓った。 「ん…ソラ、ン…?」 刹那の腕の中で、シリルが目を覚ます。 起き抜けでまだ眠そうに目を擦っていた。 「すごい、ねぇ。かっこいいねぇ、ガンダム」 柔らかな笑みをほんやりと浮かべて、シリルが刹那にそう言う。 「あぁ、すごいな。…でも、もうハロと一緒でも来ては駄目だぞ」 「ソランとニールが一緒なら、いい?」 「…そうだな」 刹那は怒るかと思ったが、どうやら俺と一緒でシリルの笑みにほだされてしまったようだ。 子どもの笑顔とは無敵だ。 刹那があやす様にシリルの背中を撫でれば、また眠気がやって来たようだった。 幾分も経たないうちに聞こえた寝息に、思わず口元が緩む。 コックピットの中の愛しい存在を、腕を伸ばしてまとめて一緒に抱きしめた。 09.12.20 日記掲載 ―――――――― こんなにさくっと話を書けたのは久しぶりです。笑。 楽しかった。 実際ハロがどの辺まで出来るかは不明…。その辺は、まぁいいように。(… |