たまには、いいじゃないですか。 甘ったるいその吐息はいちごみるく 「はい、姉さん」 ライルが笑顔でそう言う。 手には少し大きめの箱を持っていた。 「…何だ?」 「プレゼント」 「…何の?」 「日頃の苦労を労って」 にこにこにこにこ。 ライルはただ笑うだけだ。 双子の弟がこういう顔をしている時は、大抵何か企んでいるときだ。 「中身は?」 「見てのお楽しみ。たぶん気に入るぜ、刹那も」 ライルの言葉に、ニールは目を丸めた。 「刹那?何で刹那?」 「いいからいいから。じゃ、俺は行くから」 「メシは?」 「だって刹那来るんだろ?お邪魔虫は、とっとと退散するよ」 そう言って、ひらひらと手を振ってライルは扉の向こうに消えた。 なんだ、久しぶりに来るって言うからせっかく多めに作ったのに。 ニールはそう独り言ちた。 刹那と一緒に夕食を食べて、ある程度片付けをして、先にシャワーを浴びた。 これからの時間を思うと、少し身体が熱くなった。 思えばするのは久しぶりだった。 会うには会っていたが、お互いのちょっとした予定やすれ違いでゆっくりとした時間は取れなかった。 だから、事に及ぶまでに行かなかった。 別に、しなくてもいい、とは思ってる。 けど、出来ればしたい、とも思ってる。 浴室を出て刹那に空いたことを告げる。 先に寝室に向かって、ベッドの上に座って髪を乾かした。 ふと、ライルがプレゼントだ、と言って渡してくれた箱の存在を思い出した。 刹那がシャワーを浴び終わるまでは暇だ。 そう思って、箱に手を掛けた。 ちょうど、洋服が入っているようなサイズのその箱の蓋を開ける。 開けて、驚愕した。 驚きのあまり急いで蓋を再び閉めて、クローゼットに押し込んだ。 ただそれだけの動作だったが、ニールの息は上がった。 あの馬鹿…!! ベッドにもたれて、ただ双子の弟を恨む。 何がプレゼントだ。何が日頃の苦労を労ってだ。 弟が何を考えてアレを自分に贈ったのか、その真意は考えようとも思わなかった。 アイツのことだ、絶対におもしろ半分に決まっている。 ライルの思う壺にはなりたくなくて、絶対に突き返してやろうと思った。 『たぶん気に入るぜ、刹那も』 そう、思ったのに、ライルの言葉が甦った。 じ、とクローゼットに視線を移す。 喜ぶ、だろうか。果たして彼にそういう趣味があるのかはわからない。 そもそも自分に似合うかどうかも不明だ。 刹那がそれで落胆したらそれでもう今日の夜は終わりだ。 だが、もし喜ぶとしたら? 久々のセックスで、それで盛り上がるとしたら? 気付いたときには、ニールはもうソレを閉まったクローゼットに手を掛けていた。 ガチャリと、部屋のドアが開く。 刹那は寝室のベッドに膨らみがあることに少し驚いた。 待ちきれなくて先に寝たのだろうか。 ギシリ、とベッドのスプリングを鳴らして上に乗る。 「ニール?」 びくりと、彼女の肩が揺れた。 起きてはいるらしい。 だが何故布団を深々と被っているのだろうか。 まるで自分に見られまいとしているようだ。 「どうした?」 「や、あの…その…」 歯切れの悪い返事にますます疑問が深くなる。 これはもしや、今日はもう寝たいという合図なのかもしれない。 「…寝るか?」 そう言って、ベッドに潜り込むべく布団をはいだ。 ニールの、焦った声が耳に入ったが、もう遅かったようで。 刹那の視界に入った彼女が身に纏っていたのは、所謂、ベビードールと呼ばれる代物だった。 フリルが多くあしらわれて、しかも透ける素材を使われているから、隠すところがギリギリで隠されていて、 あとは素肌が綺麗に写し出されていた。 「…っあ、あのな、コレ…!」 「…ずいぶんとやらしい格好だな」 「ち、違う、俺じゃなくて、ライル!アイツが、プレゼントだ、とか言って…! …っご、ごめんやっぱ脱ぐ…!」 恥ずかしさと後ろめたさに耐えかねたニールはそう言って、慌ててベッドから降りようとした。 刹那は彼女の腕を掴んで、そこに留まらせた。 「せ、つな…?」 「嫌だとは言っていない」 刹那の言葉に、ニールの目が見開く。 「だ、だって…こんなん…」 「いいだろう、たまには」 「ホント、か…?」 「あぁ」 そう言って、彼女の柔らかな唇に口付けた。 (さぁ、快楽の海へとダイブ) 09.06.07 日記掲載 title by=テオ ――――――― すいませんでしたぁっ!!(ジャンピング土下座 |