あまいくちづけを、あなたのてに 息をするかの如くきみは、 情事後の気だるさが抜けないまま、刹那は重くその瞼を上げる。 目の前には、自分とは違う、人種独特の色白くきれいな顔立ち。 瞼が閉じられているせいでその奥の空色を見ることは叶わなかったが、寝顔を見れたことに対して少し満足感があった。 刹那は、自分の身体を包むように伸ばされた長い腕に気付く。 相手を起こさぬよう、ゆっくりと身体を反転させた。 すると目の前には、今度はその男の手。 普段手袋に覆われて外に晒されることのないそのきれいな手に、刹那は丁寧に触れた。 彼がこの手を出すときは、入浴と、そして、自分に触れるときだけだと刹那は知っている。 そのことに、刹那は優越感を感じられずにはいなかった。 この手によってもたらされる快楽を知っているのは、自分だけだと、そう思わずにはいられなかった。 その時間だけは、自分が女であることを許された気がした。 手入れの行き届いた手だった。 職業柄そうでなければいけないのもあるのだろうが、男の性格も表しているように思えた。 愛おしそうに、刹那はその指の一本一本に口付けをした。 最後の小指に口付けた後、刹那の目の前の指が動いた。 「好きだねぇ、お前さんも」 「あぁ、好きだ」 あまりにさらりとそう言われ、ロックオンは面食らう。 普段そんなこと決して言わない人間が、自分の手に対して素直に感情を露にした。 自分の手であるにも関わらず、ロックオンは、どこか複雑な気持ちになった。 「…刹那は俺の手が好きなの?それとも俺が好きなの?」 自分でも子ども染みて馬鹿馬鹿しいと思う。 だが、どうにも聞かずにはいられなかった。 「アンタの手だから、好きなんだ」 背を向けたまま、刹那が淡々と答えた。 ロックオンは、固まってしまったようにしばらく何も言えなかった。 刹那はそんな彼に構わず、また彼の手に触れ始めた。 ようやくロックオンが動いたかと思えば、刹那をその腕の中により一層きつく閉じ込めた。 「すげー殺し文句…」 くつくつと、肩を震わせる。 刹那の身を反転させ、その唇に触れた。 その手も、その指も、全部全部愛おしい。 09.02.12 title by=テオ ―――――――――――― 自分でもびっくりするぐらい甘い。 |