ずるいな

そんなの、卑怯だ
優しくしてあげられなくてごめんね
「お前の家族を殺した組織に、俺はいた」

「それで?」

まっすぐな眼が、こちらを見ている。
その発せられた言葉とは裏腹に、ひどく澄んでいた。

「…俺が間に合っていれば、お前の兄も、死なずに済んだ」

「…だから?」

「……だから…」

続きを欲する俺の言葉に、刹那が噤む。
一つ、ため息をつく。
「だから、お前のこと恨めって?殺せって?」
そう言ってやれば、またあの澄んだ眼がこちらを見た。
あぁ、あの色は好きだ。
「お前には、そうする権利がある」
何の迷いもなく、彼がそう言う。
たぶん、兄さんにも同じことを言ったんだろう。


また一つため息をついて、それから言う。
「残念ながら、俺は兄さんほど優しくはないよ。
恨んでなんか、やらない。心になんか、残してやらない」
兄ならきっと、その言葉を受け止めてやったんだろう。
それでコイツの、望む通りに、してやったんだろう。


あの人は、やさしいから。
「お前の望む通りになんか、させてやんないよ」
だからもう、解放されていいよ
「…ずるいな、そんなの」
死ぬなら、貴方の手がよかった
09.12.30


title by=テオ